帯に高橋源一郎のコメントがあったし、「悪意に満ちた幻の名作」みたいなことが書いてあったので、何の予備知識もなく読んだ。読まなきゃよかった。
大学の研究室で、増やされ、何の意味があるのかもわからない残酷な生体実験を受け続けるラットたち。経過観察のためオーブンに放り込まれる子猫たち、熱中症研究のために高温のガラスの中で延々と走らされる犬、ぴったりした防止に熱湯を注ぎこまれる兎……卵を産むためだけに十四か月間生きている鶏、とさつ場へ送られる子豚……動物実験だけではない、我々の生活のすぐ裏側で残虐に奪われ続ける<人間以外の>動物の命……
そんな中、動物たちが立ち上がる。不思議な懐かしいにおいに誘われて、飼い犬たちは飼い主の手を離れ、ジャングルの動物たちはサバンナを目指して疾駆する。動物たちに目覚めた自我は、人間の手でもてあそばれ、殺されることを拒絶し、「大集会」を開く。あらゆる動物が、一つの意思のもとに集まる大集会……それは世界各地で起こり、人間はパニックに陥ることになる。
そんな中、人間の唯一の味方となったのは、とある大学の実験室にいる一匹のネズミ、ドクター・ラットだ。ドクター・ラットは、生まれてすぐに迷路実験を受け、発狂した。完全に狂ったネズミであるドクター・ラットだけが、動物たちの大集会に反抗し,「死こそは解放なり」というスローガンのもと、反乱を起こそうとするラットたちを殺しまくる。
帯には「味方」って書いてあったけれども別に彼が何をしてくれるわけでもない。大集会、すなわち圧倒的な数で一堂に集まった動物たちに人間は何をするか。サバンナで、ライオン、象、サイ、猫科の大型獣やサルの集団に何をするか。
結局物語は悲劇でしか終わらない。何が言いたいのかといえば、「動物実験、だめ、絶対」ってことだろう。動物好きは本当に読まないほうがいい。現実では、自分がかわいがっている犬や猫やハムスターと同じ仲間がある一部の施設ではどんなに残虐な扱いを受けているか、そこから目をそらしたくないという強い意志があれば別だが。私はそらしたい。知ってるけど。この本に書かれている実験はフィクションだろうが、まあ似たようなことは実際行われている。
動物実験反対、とか言って、化粧品とかはなるべく「動物実験してません」って掲げているメーカーのものをつかってるけど、でも肉は食べるしね。動物には自我がない、って希望的観測のもとに成り立ってる部分は確かにある。でも猫飼ってる。猫はかわいい。動物実験によくつかわれるのも猫だ……
考え始めるときりがなく、今までなんとなくスルーして目をそらしてきた現実が、いきなり予備知識なく読んだこんな本で目の前に出てくるなんて聞いてない。考えたくないなあ。でも現実なんだよなあ。
この本、30年以上前に書かれたものらしい。あとがきを読むまで全然気づかなかった。普通に新刊かと思っていた。つまり、現実は30年以上前から変わっていない、動物実験や食肉市場にかかわる現実は全く色あせていないのだった。動物愛護の法律はいろいろ改正されてるだろうけど、それだって研究室に一歩は言ってしまえば関係ないでしょ。でもなあ。結局堂々巡りになるのでこのあたりでやめたい。できれば読んだこと自体を忘れたい。
SFとしては名作なんだろう。面白かったし。でも動物好きは読まないほうが絶対いい。特に犬、猫、兎系のかわいい動物好きは……動物実験をしない薬が飲めるのか、って言われても困るけど、人体実験はだめで動物実験がいいっていうのは、要するに動物がしゃべれないからだけだと思うけどなあ。
自分でやるかやらないか? と問われたら絶対やらない動物実験。そして、肉を食べたかったら自分でやれ、と言われたら私はベジタリアンになるかもしれない。だが絶海の孤島に置き去りにされて、食料が何もない、となったら兎でも何でも食べるかもしれない。そのくらい不毛な議論だと思うけど、それでも心にチクチク引っかかる。やっぱり読まなきゃよかった。読んで後悔した作品は久しぶりだ。
何度も言うが、動物好きには絶対にお勧めしない。肉好きは読んでおけ。